彷徨える初期高齢者

こころの中の私という同一性の海の中で、少年から大人に移りゆくまでの自己幻想にふと至ることがあって、ああ、あの感じはなんだっけとその感情に寄り添いながら、激しく回顧したい欲望にとらわれる。 喪失が長く続いた後の面影としてふと現れる、こころの不思議さに探求の理性を発動したくなる。 哲学か文学かは問わず、私という現象に没頭したい。

65歳になって振り返ること

人は忘れられぬ景色を

いく度かさまよううちに

後悔しなくなれるの

___________________松任谷由実

 

受け止めるためには君の何倍もの心の深さが必要だと

気づかされた時にはもうぼくの方はボロボロだった

君は自分の無邪気さの、奔放さに無関心だった

可愛いからといってぼくの心を弄ぶのは

ぼくの想像を超えていたのに

ぼくはけなげにもクールに構えすぎていた

 

そんなに強くはなかったことに

君がいなくなって思い知らされた

あれから君以上の人に出会わなかった

みんな慎重だった

無防備に、無鉄砲に自分を投げ出して

受け止めさせるような大胆さを持つ人に

めぐり逢わなかった

 

そこに真逆な人がいたことに気づいたのは

ぼくの心が苦悩の果てに入れ替わったからだ

ぼくの何気につぶやいて本人も忘れているような小さな一言を

何日も後になってぼくに思い出させた

ずっと何も言わずに長いあいだ待ち続ける人を

初めて知って泣いてしまった

ぼくがどんなにしていても待つ人がいることに、救われた