開界録2019

The time I retired from jobs is the period reviewing and comprehending my past life.

時代精神というもの

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今からあの頃を振り返ると大学時代というのは無限定で、実際は小さな地方都市に住んでいたのに少しも地方が田舎だという意識がなかった。こんな比較はぼくだけにしか意味がないことだが、あの頃のK市は現在の東京よりも存在感があって、常に何かが起こりそうな予感に包まれていた場所だった。そういえば世界自身が奇妙に同一性を持って現れていて、パリもワシントンも北京も東京もベルリンもプラハもどこでも騒がしかった。別に隠れる必要性があったわけではないけれど、ぼくは自分の部屋に閉じこもってばかりいた。たまにどうしても孤独でいることに耐えられなくなると散歩で行けるほどの友人の下宿部屋を尋ねていくのだった。

ぼくは求道者のようだった。生活の日常のこまごまとしたことには関心がなく、ひたすら自分を鼓舞し導いてくれるものに取り憑かれていた。世界は向こうの方で熱く混乱していた。パリではオペラ座が占拠されて討論集会が行われたりしていた。そんな時に自分だけ将来の進路を考え、実務的な利益を求めるようなことに時間を使うべきではないと感じられていた時期だった。

時代精神というものが確かにあったような気がする。暗くした穴蔵のようなジャズ喫茶で時間を忘れるような大音響の坩堝の中に浸っているとそのような精神を感じているのが分かった。そんな暗い所でバタイユなんかの難しい本を開いて固まっている大学生がいたりした。夢ばかり見ていたのにそれが当たり前のように誰も責めたりしなかった、、、