開界録2019

The time I retired from jobs is the period reviewing and comprehending my past life.

定年退職後すぐのころ

六十二にもなって確たる自信もなく
表層をとりあえず渡り歩いてきて
死んでやろうかとも
おっかなくて言えないじぶん

言葉に重みや深みがないことを気にするだけの
知性というものを
誰が褒めてくれるというのか

生きていくのに金や家や女が必要というが
他人をずっと生きてきて
ほんとうはじぶんを見殺しにしてきた
だけじゃないのか

ビジネスには時間がない
等価交換には均一空間が前提とされている
温かみのある礼節などコストだとのたまう

人類は生物と動物の身分を失って
ロボットになろうとしている
うつむきかげんの100円均一の服を着た
老いた使い捨てロボットを大量に生産している

サラリーマンというのはとりあえずの群衆だ
勇気がない自信がない世界がない
個性などというものは
システムにとって有害である

うまく騙して人を出し抜いて
弱い奴らを使い切る処世術を身につけた者が
成功者という称号を得る

関東軍や敗戦を認めない政治家と同じ
部類の人間が違う場所で
生きているだけのこと

じぶんはどういうわけか弱い人間が好きらしい
みんなでいじめるから盾になってやろうと
無邪気に前に出たりする子供だった

まつもとじんしょくと名付けられたきたない
クラスメートを先生以上にかばっていた
きたない服を着てきたない顔をしていても
まじめにおとなしく着席しているじゃないか

じぶんはどうやら一人でいる人間が好きらしい
詩人 作家 哲学者 教師 学者 音楽家
アスリート 職業を別に持つ評論家
ごく少数の政治家など

一人でいる時間が他の人より想像以上に
長く深い人たちだ
彼らは一人になって徹底的に考えているからだ
そこから出てくるものに
じぶんは信用を置いている

今年になって世間から降りることを
許されて無駄な時間を使い放題に使って
ようやく自身を視る知力と体力を取り戻す
ことができるようになった