開界録2019

The time I retired from jobs is the period reviewing and comprehending my past life.

想い出のシャコンヌ

生のクラシックコンサートに行けるような身分ではもちろんなかった。道端に置いてあった森永アイスクリームのベンチを勝手に拝借して、アイの所は「愛」に塗り替えて置いてあるような薄汚い美大生の下宿部屋で、バッハのシャコンヌが鳴り響いていたのは割と立派なオーディオ装置からだった。壁には「パリコミューン100周年政治集会」のポスターが貼られていて、そのタイトルはランボーの詩から引用された語句で飾られていた。パリコミューンのキナ臭い噴煙の上がる蜂起空間とバッハの無伴奏パルティータは、モノクロ映画のワンシーンのように「似合って」いた。その下宿部屋は小さな祝祭空間だった。それはぼくの心に重くて内臓的な疼きを沈殿させた。もう45年以上経っても忘れられない想い出になっている。

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