開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

読むこと

全てを読むとしたら誰を選ぶか?

読書についての小林秀雄の言説の中の、自分にぴったりと感じた作家の全てを読めという一文がこのところぼくの読書を迷わせている。つまり、この影響力の支配下に入ったわけだ。最初に選んだのは、サラリーマンの経験がある小説家、黒井千次だった。確かにサ…

フィクションに生きる指針を求めるな

ぼくの人生は幸いにも不幸に遭うことはなかった。必ずしも意に沿った就職先ではなかったが、定年までなんとか勤めることも出来た。詐欺に引っかかることもなく、犯罪に引き込まれることもなかった。予期せぬ社長からのパワハラや屈辱的な人事にも、鬱になり…

学術書読書目標を追加した訳

今年の目標の一つ、学術書を読むで、今読んでいる柄谷行人の「世界史の構造」に4冊を新たに追加した理由について記しておきたい。それは、2018年1月5日のぼくのブログに戻ることになる。その時に読みたいと掲げていた本が、追加した4冊である。トロツキー…

本の世界に目覚めたころ

現実に目に見えるのは、本という活字の塊で背表紙にタイトルというものが付いている。何が書いてあるか、読むまでは謎の状態でいつまでもじっと控えている。中学を卒業して友人の家に遊びによく行くようになって、友人の部屋の本棚にそれらが整然と収まって…

本とともにある生活

推理小説とかファンタジー、時代小説などと違っていわゆる純文学にはどこかが決定的に違う部分があるように思える。藤沢周平や安部龍太郎や司馬遼太郎、永井路子の小説はいくつか読んで面白かった。ミステリーものでは、ローレンス・ブロックのニューヨーク…

one book one issue

ぼくがどんな風に小説を読んできたかを1冊1テーマで表してみました。 フランツ・カフカ「変身」 / 家族の中で毒虫に変身することの意味 ヘルマン・ヘッセ「デミアン」 / デミアンの正体は何か サン・テグジュペリ「星の王子さま」 / 子供の死をどう救い出…

コロナとどう向き合うべきか

金沢工大の I 先生に講演依頼することになった。今年の柳澤金沢学院大学名誉教授に引き続いて、来年の3月に行われる公開文学講演会での市民向けの講演になる。I 先生の専門は大学のホームページでは国文学と教育学となっていた。以前に源氏物語で講演された…

読書運動を始める

佐藤優と松岡正剛の共著、中公新書「読む力」によると、現代人は急速に読む力が衰えてきているという。おそらくそれにはインターネットの普及が関わっていると思える。とにかくググッて見ればたちどころに答えは見つかるという便利さを手に入れてしまったの…

読む幸福な時間

今ほとんど満たされて平穏な心の状態だ。何か書きたいことがあるわけじゃない。記録しておきたいとも何も思わない。本も読みたい気がしない。読めないわけでもない。ちょっと思うのは、こんな平穏な状態は普通書くのが難しい気がして、だったら挑戦の意味で…

知ると分かるとの違い

日々スマホやパソコンに接続して暮らしていて我々は情報に取り囲まれている。無料の情報や公共性のある情報や特定の人にしか必要のない情報がある。とにかく情報で溢れていて、情報漬けになって不必要に情報に晒されているのが普通の状況になっている。だか…

読者とは何か?

読書とは何かではなく、読者について考えてみようと思った。読書については何らかの方法論があって、読解力の向上や深化が得られるように論じられると思う。読者は千差万別だ。しかし読者は作家と共にあるという関係は切っても切れないものだろう。作家は読…

源氏物語に集中する

世界最古の小説が日本で生まれたという、歴史的事実をどう捉えるか。神話や経典や説話や哲学書ではなく、物語を推進する心理や風習や情緒や感情が語り手によって描かれる、文体を持って構築される小説形式が11世紀に出現した。それは英国の人文研究家によっ…

久しぶりに迷う

昨日、公民館で源氏物語を読む会の5回目を終えて帰宅してから今日まで、何だか分からないが精神的な不安定を感じ続けていた。これを書くことでそれはやはり不安定なのだと納得できた。源氏物語の世界にますますはまり込んで行くのが分かる。多分不安定要因…

日本の歴史が分かり始める体験

定年後の暮らしをサラリーマンだった頃に描いてた時、読書三昧のイメージが一番先に来ていた。本に囲まれて毎日明け暮れるのがいいと思っていた。今思うとそれは、まさに昭和のイメージだ。インターネットというものがなかった時代と読書三昧の生活は親和性…

源氏物語から何を吸収できるか?

我が国には源氏物語という、世界最古の小説が残されていてそれを元にいくつかの有名作家による現代語訳があり、読むことができる。英語にも翻訳されているので世界文学として、世界に日本文化のコンテンツが共有されている。この内容を源氏物語を読んで知っ…

便利さは墓穴を掘らないか?

何らかの制限が必要と感じ始めている。現代社会はネット環境やコンビニなど便利になって、簡単に情報が手に入ったり簡単に物が買える、ということに注意を向けたいと思う。例えが変かもしれないが、テニスでスキルの知識は簡単に手に入るが、そのスキルを身…

相手を尊重して生きること

穏やかな午後の日常をリビングのソファーに寝そべって、何もない今を楽しんでいた。何もしなくていいし、何かやることがあればすればいいという、余裕の心境にあることに気づいた。もう何年もその感じを失っていたように思う。全く久しぶりにその感じに触れ…

ぼくはどんな人を愛しいと思うか?

このブログで何度も書いているが、唯川恵という金沢出身の直木賞作家について改めて触れたい。来月の19日に金沢市の隣の野々市市に来られてトークショーが催され、ぼくは主催者から事前に何か質問をするように「段取り」されている。多分会場で誰も質問しな…

本を読むこと

本を読むことは簡単にできる。文章を書いて本にすることはかなり難しいのに対して、本になったものを読むことは字が読める人であれば、誰でもすぐにできる。図書館で借りてくれば無料で読める。簡単にできることなのに、本を読む人はどんどん少なくなってい…

読書三昧とは

かすかに虚しさを感じ始めている。午後から夕方にかけての時間は、時々軽い虚しさが訪れることがある。本が読めなくなるとやることがなくなり、手持ち無沙汰になる。今この瞬間の自分の心にあるものを見ようとすると、自分の一生を終えるまでに何かを残した…

読書と私

本を読み、文章を書くことで何者かになる___本を読んで内面が作られ、文章を書くことで私が主語として立てられるからです。高校に入って世界文学全集を読み始めた時、面白くて一冊読み終えると次はこれと読み進んでいき、だんだん自分が大きくなるような…

中に入れなかった小説

読書会で取り上げられたので読むことになった三島由紀夫作「蘭陵王」。読書会では当然読んだ感想を求められる。ぼくの小説の読み方は、作品中の登場人物の内面に入り込んで、大概は主人公と共に思考や行動に寄り添うように、いわばのめり込むようにするのだ…

特攻隊と星の王子さま

昨日ブログに書いたことが当然自分に返ってくる。I'll be a person to encourage.と書いたら、そのような自分になろうと考えることになるよね。自分がこれまで読んだ小説の登場人物の中で、君に紹介できる人物がいなかったか頭をめぐ回らせてみたんだ。例え…

停滞期の過ごしかた

ここしばらくやる気が起こらず、すぐに眠くなって抵抗できずに眠ってしまうことが続いた。これはひょっとしてナルコレプシーなのではないかと心配になって、ググッて見たが違うようだった。しかし二度も昼寝をするようなことは今までなかった。どこか異常(…

小説とその他

百済観音の微笑みの秘密を探ろうとして、飛鳥時代のわりと学術的な本をここしばらく読んでいた。YouTubeで歴史解説のわかりやすい動画もいくつか見て、大まかなイメージも掴んだりした。百済観音は現在、法隆寺に安置されているということだが、法隆寺には分…

同じ本を読んでる人

どういう経緯でその人のブログに出会ったかはもうたどれないが、その人はぼくと同じ読書傾向があるようだった。彼(彼女かもしれない)のブログに、以下の文章があって目に止まった。 村上春樹の「ノルウェイの森」の主人公のセリフに「『資本論』を正確に読…

自分をつくるための読書

「星の王子さま」から 「金持ちになると、何の役にたつの?」「もし誰かが、ほかの星を見つけた時にそれを買うのに役立つのさ」「この人は」と王子さまはこころの中で思った。「あの呑ん兵衛と同じような理屈をこねているよ」(呑ん兵衛の理屈とは、なぜ酒を…

存在を問う小説とは?

あなたが小説を書けるとして、描いた小説の中に生きたいと思うか、現実の今のままの世界に生きたいと思うか、選べるとしたらどうなるだろうか?精一杯の理想の状態を小説に書いてその中に生きたいという生き方を選ぶか、あまりぱっとしないけれど、夢みたい…

駄洒落かユーモアか

カズオ・イシグロの「日の名残り」を読み終わって、最後がユーモアの勧めで終わっているのが感慨深かったと昨年の暮れに友人にメールした。友人もユーモアについて感慨深いと返信してきて、それからしばらくユーモアがぼくの頭に残り続けることになった。そ…

セクハラにかかわる地殻変動のような動き

小田実の全体小説「ベトナムから遠く離れて」を玉川図書館から借りてきて1日読んできて、第2章の初めの方で読み続けるかどうかを問わねばならなかった。おかまが主人公ではぼくには追体験は無理だった。戦争や学生運動が扱われていても主体に共感できなけ…