開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

読書記録

桐野夏生「バラカ」を読んで

桐野夏生さんも金沢市生まれである。これまで唯川恵さんと水橋文美江さんの小説を地元出身という理由から読んできたが、桐野夏生さんはそれ以前から同時代の学生運動がらみという、小説を読む理由で読んでいた。ここ二、三日「バラカ」を読んでいたが、それ…

「スカーレット」を読む

水橋文美江 作「スカーレット」、水田静子 ノベライズを昨日読み終えた。この前のブログで下の3分の1ぐらいで読めなくなったと書いたが、途中で辞めてしまうのがためらわれた。個人の趣味で読む小説だったら、おそらく中座も気にせずに縁がなかったで済ませ…

日本の歴史が分かり始める体験

定年後の暮らしをサラリーマンだった頃に描いてた時、読書三昧のイメージが一番先に来ていた。本に囲まれて毎日明け暮れるのがいいと思っていた。今思うとそれは、まさに昭和のイメージだ。インターネットというものがなかった時代と読書三昧の生活は親和性…

文学的日常に生きがいを感じる

金曜日、泉野体育館のテニス教室で現代テニスでのサーブを教わる。土曜日、野々市中央公民館で李恢成の「哭」の読書会を開く。日曜の今日は、野々市スポーツランドでテニス仲間とダブルスを楽しむ。3日連続でそれぞれ違う仲間と外で会って交流した。こんな…

島田雅彦の「虚人の星」を読んだ

何か書きたくなってこのブログに書きつけようとしている。今日はこんな日だったみたいなことは書きたくない。昨日、島田雅彦の「虚人の星」という小説を読んだ。一度この作者の政治観が俗っぽくて、常識となっているごまかしに無自覚なので読むのを投げ出し…

自我がつくる内面世界

今日「大阪」を読んでいて、作者の柴崎友香の中学から高校時代の自分を回顧する場面が詳細に綴られているのを、やっぱり都会の女子だなと感じた。流石に作家の記憶は鮮明で具体的だった。漫画やテレビ漬けの小学校時代だったのはぼくと同じ環境と思えるが、…

1985年

この前、柴崎友香の「春の庭」を読んで面白かったので、図書館に同じ著者(岸政彦という社会学者との共著)の「大阪」を予約していた。二、三日前から読んでいて大阪の移り変わりを懐かしんでる文章に、時代を描写する面白いエッセイを見つけた感じがした。…

微妙な変化を作り出す

自分の行動を変えるには意識を変えればいい。自分を作っているのはほとんど意識なので、意識を変えることに注意を向けて自分をコントロールするわけだ。ぼくは本を読むことが意識を作ってきたと思っている。もとより環境が人間を作るのだけれど、環境を一定…

加賀乙彦の小説はフォニイか?

ブログを書いている自分に会いたくなった。何となく気分が沈んでいるのは、江藤淳のフォニイ論というのを読んだからだ。割と好意的に読んでいた加賀乙彦の小説をフォニイとケチをつけられた。フォニイとは「空っぽでみせかけだけの、インチキの、もっともら…

唯川恵著「雨心中」を読む

少し唯川恵を誤解していたようだ。46歳になって「肩ごしの恋人」で直木賞をとった時に、「軽すぎる」とした評者がいたのに対して、これまで深刻な作品が多かったので軽めの作品を書きたかったと述べていたのをぼくは意外に感じていた。「淳子のてっぺん」「…

読書三昧とは

かすかに虚しさを感じ始めている。午後から夕方にかけての時間は、時々軽い虚しさが訪れることがある。本が読めなくなるとやることがなくなり、手持ち無沙汰になる。今この瞬間の自分の心にあるものを見ようとすると、自分の一生を終えるまでに何かを残した…

小説に何かを求めたい方へ

ぼくは高校一年から世界文学全集を読み出していて、小説は長編が好みだ。長編だと読んでいる間は小説中の登場人物と一緒に生活しているようになって、ふわふわした日常体験ができて、それが非日常になって面白いからだ。地元の読書会に参加するようになって…

小説に美文は必要か?

唯川恵の「淳子のてっぺん」から朗読にふさわしい箇所を抜き書きしたが、今日3回目の抜き書きをアップしておきたい。これは期せずして作者の文章をそのままなぞる経験になった。ここまで時間をかけて読んだことはなく、何か新鮮なものを感じなくもなかった…

読書習慣をどう作るか

ぼくと本との出会いは記憶を辿ると小学校6年生だったように思う。クラスに喜多さんという女の子がいて彼女からの影響だったように思う。何でもよく知っていて感心することが多く、いわゆる感化を受けたのだろう。学校にある図書館に初めてふらっと入って書…

左翼と右翼

大江健三郎は最初からすごかった。右翼青年山口二也をモデルに「セヴンティーン」と「政治少年死す」を描いた。今日読んで久しぶりに小説で震撼する経験をした。対して三島由紀夫は左翼少年を描くことはできなかった。「政治少年死す」は長らく右翼の抗議で…

若者に寄り添い続ける作家

今度の野々市市の公民館での読書会で、村上春樹の短編「アイロンのある風景」がとりあげられる。昨日2回目を通読した。隅々までも馴染みの「村上ワールド」だった。ぼくには馴染みでも、ぼくより人生の先輩方ばかりの読書会で「村上ワールド」は初の人がほ…

色川武大「善人ハム」を読む

戦後すぐの頃に、ゲーリー・クーパー主演の「善人サム」と言う映画が流行ったそうだ。その頃米軍が日本を支配し占領政策を行なっていたので、アメリカ文化を日本人に洗脳させようとしていた。その「善人サム」の主人公を善人の干物みたいだと苦笑した、と「…

村上春樹の暗い部分

今日はいつもと違う気持ちでこのブログに臨んでいる。誰も身の回りの知り合いのいない場所で何か書きつけたい気持ちは変わらないが、何か裡に蓄積しているものを吐き出したいのではなく、これまでの自分に向き合い反省というか、もう少し強めの懺悔の気持ち…

8人目の村上春樹論

昨日、多分8人目になる村上春樹論、小島基洋の「村上春樹と鎮魂の詩学」をうつのみや上林店で買ってきた。村上春樹論はこれまで、内田樹、加藤典洋、竹田青嗣、 清真人、ともだもとゆき、松山慎介、吉本隆明と読んできた。今回の小島基洋氏はジェイムス・ジ…

過去の記事を修正したい

サリンジャーの「ライ麦」に対する村上春樹の評価を批判した松岡正剛のコメントについて、過去のぼくのブログでは村上春樹の方を支持していた。 ところが、もう一度松岡正剛のコメントの所属サイトを読んでみると、松岡正剛の指摘の方が当たっているように思…

今こそ、引きこもり小説を

「死霊」を読み進めていて、主人公三輪与志の父広志の人物像がつかめず中断していた。戦前の革命運動世代の与志の兄や首猛夫などは想像できるが、父広志までが極端に抽象的な話をし出すのはどんな歴史的背景があるのか想像できなかった。そこでネットで検索…

三島由紀夫は嫌いだ

「金閣寺」はようやく半分近くになった。主人公の溝口の大谷大学で出会う柏木という男が気持ち悪い。内飜足とされるが、溝口に向かって自身の童貞捨ての経験を披露するくだりがある。不具と美女のおぞましい関係に読者を導こうとする作者にぼくは馴染めない…

安部龍太郎著「等伯」を読む

今、安部龍太郎の「等伯」を読んでいる。昨日は「上」を読み終えて今日は「下」を半分ぐらいまで読んだ。ぼくは時代物の小説は食わず嫌いでほとんど読んでいない。「蝉しぐれ」と「龍馬がゆく」ぐらいだ。自分の生き方の指針になりそうなものを小説に求める…

本は読んでから感想を述べること

評伝「資本主義と闘った男」を昨日読み終わって、泉野図書館に返しに行った。642ページの本をひたすら読むようにして3日で読んだ。経済学の本を評伝とはいえ理論解説も含んで読み通すのは、自分にとってチャレンジだった。少し自分の読解力に自信を持った。…

宇沢弘文という男

ノーベル経済学賞にもっとも近かった男、宇沢弘文を知る。私の最も敬愛する、尊敬する国際人の一人として学び続けたいと思う。今評伝「資本主義と闘った男」(佐々木実著)を読んでいる。 Youtubeでは肉声は静かで優しかった。 www2.nhk.or.jp

3人の村上春樹論

平野芳信、市川真人、黒古一夫という文芸評論家の村上春樹論を最近続けて読んだ。一番批判的なのが黒古一夫で、「1Q84」は壮大な失敗作としている。それぞれ小説に何を求めるかによって村上春樹に対する評価が違う。色々新しい発見があったが、これまで自分…

16歳から読む世界文学

定年後の自由な身分になって自分の人生を分析対象に選んで回想を繰り返していると、つくづく内面世界が掛け替えのない貴重なものに思えてくる。私は貧困の家庭には生まれなかったが、経済的に裕福な家庭とは根本的に違う人生訓の中で育てられた。つまり我慢…

小説は親しみを作り出している

今朝、というのは早起きを習慣にしているので7時ちょっと前になるのだが、いつものように早朝の読書をしていて気づいたことがある。ここしばらくは来月読書会の課題本に選んだ「苦海浄土」を読んでいる。それは突然頭に浮かんできたのだが、「苦海浄土」とど…

4年前の今日の日記から

今、竹田青嗣の「ニーチェ入門」を読み終える。マルクス主義没落後、現代思想としてもてはやされたポストモダニズムの源流がニーチェであることは知っていたが、この本でその内実をつかめたばかりではない。竹田青嗣という、ぼくが苦境の時に出会った哲学解…

原田マハについて

原田マハの芸術観(美術鑑識)については、昨日のブログで評価を改めると書いたが、小説家としての評価については判断できないでいた。その評価というのはあくまで個人的な基準であって、ぼくの中で読むに値するかどうかを決めるものに過ぎない。何しろ読む…