開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知るために、そしてそれを解くために。

読書記録

色川武大「善人ハム」を読む

戦後すぐの頃に、ゲーリー・クーパー主演の「善人サム」と言う映画が流行ったそうだ。その頃米軍が日本を支配し占領政策を行なっていたので、アメリカ文化を日本人に洗脳させようとしていた。その「善人サム」の主人公を善人の干物みたいだと苦笑した、と「…

村上春樹の暗い部分

今日はいつもと違う気持ちでこのブログに臨んでいる。誰も身の回りの知り合いのいない場所で何か書きつけたい気持ちは変わらないが、何か裡に蓄積しているものを吐き出したいのではなく、これまでの自分に向き合い反省というか、もう少し強めの懺悔の気持ち…

8人目の村上春樹論

昨日、多分8人目になる村上春樹論、小島基洋の「村上春樹と鎮魂の詩学」をうつのみや上林店で買ってきた。村上春樹論はこれまで、内田樹、加藤典洋、竹田青嗣、 清真人、ともだもとゆき、松山慎介、吉本隆明と読んできた。今回の小島基洋氏はジェイムス・ジ…

過去の記事を修正したい

サリンジャーの「ライ麦」に対する村上春樹の評価を批判した松岡正剛のコメントについて、過去のぼくのブログでは村上春樹の方を支持していた。 ところが、もう一度松岡正剛のコメントの所属サイトを読んでみると、松岡正剛の指摘の方が当たっているように思…

今こそ、引きこもり小説を

「死霊」を読み進めていて、主人公三輪与志の父広志の人物像がつかめず中断していた。戦前の革命運動世代の与志の兄や首猛夫などは想像できるが、父広志までが極端に抽象的な話をし出すのはどんな歴史背景があるのか想像できなかった。そこでネットで検索し…

三島由紀夫は嫌いだ

「金閣寺」はようやく半分近くになった。主人公の溝口の大谷大学で出会う柏木という男が気持ち悪い。内飜足とされるが、溝口に向かって自身の童貞捨ての経験を披露するくだりがある。不具と美女のおぞましい関係に読者を導こうとする作者にぼくは馴染めない…

安部龍太郎著「等伯」を読む

今、安部龍太郎の「等伯」を読んでいる。昨日は「上」を読み終えて今日は「下」を半分ぐらいまで読んだ。ぼくは時代物の小説は食わず嫌いでほとんど読んでいない。「蝉しぐれ」と「龍馬がゆく」ぐらいだ。自分の生き方の指針になりそうなものを小説に求める…

3人の村上春樹論

平野芳信、市川真人、黒古一夫という文芸評論家の村上春樹論を最近続けて読んだ。一番批判的なのが黒古一夫で、「1Q84」は壮大な失敗作としている。それぞれ小説に何を求めるかによって村上春樹に対する評価が違う。色々新しい発見があったが、これまで自分…

原田マハについて

原田マハの芸術観(美術鑑識)については、昨日のブログで評価を改めると書いたが、小説家としての評価については判断できないでいた。その評価というのはあくまで個人的な基準であって、ぼくの中で読むに値するかどうかを決めるものに過ぎない。何しろ読む…

「荒野のおおかみ」を読んだ

自分の分をわきまえて生きることが真実の生き方だと思う。昨日ヘルマン・ヘッセの「荒野のおおかみ」を読了した。あまりにも自分を偉大なものとしすぎて、狂気の自由に生きようとしたと、今なら落ち着いていうことができる。作家は自分の経験と精神を使って…

ベルンハルト・シュリンク「朗読者」を読んで

読書には二通りある。娯楽のための読書と生き直すための読書である。前者は多くの人が楽しんでいる普通の読書であるのに対して、後者は読むことが生きることと直結している ことを示している。ちょうど「朗読者」のハンナのように、自分で本が読める喜びは至…

偽りの人生を捨てた男の物語

この世界では生きていくためには働かなければいけなく、何か職につくか自ら働く場を作り出すかしなくてはならない。アスリートや芸術家のように才能が年少時から認められればプロの道もある。研究者や学者の道もあるが、先生や周りの環境に恵まれている必要…

「嘔吐」ひと口感想

今朝サルトルの「嘔吐」をようやく読み終えた。のちに現象学に出会って「嘔吐」のテーマを哲学でやろうとして「存在と無」を書き出すことが予感できる小説だった。サルトルは意識に囚われていて存在にも意識があると感じているので、モノにも意識が取り付い…

村上春樹と福永武彦

引きつけられるようにして今日、「ノルウェイの森」を手にとって再読を始めてみた。 直子は最初から自分が死から逃れられないと決意している事がなんとなく分かり、ワタナベ君との接し方は誰かと似ているとふと感じられた。ああ、誰だろう、、、ぼくの記憶の…

何を読むのかについて

先に読むことについて書いたが、読むという行為の本質を微妙に外していたように思った。読むことについては何を読んだかを経験として分析しないことには、読む行為を説明したことにならない。単に小説を読む場合だけでなく、例えば政治情勢や相手の心を読む…

「村上春樹はむずかしい」

あえて文学的出発点という言い方で書いてみるが、言葉で自分をとらえて生きる時空間を作り出す最初の契機に、このところ関心が湧いてきている。村上春樹を定年退職後にふと気づいて読み始めたのは、同じ時代を生きて世界文学に通じる小説家をとりあえず読書…

福永武彦「ゴーギャンの世界」を読んで

次第に主題が形づくられてきている感触がある。「ゴーギャンの世界」を読み始めて感じた違和感を育ててみる方向の中で生まれつつある主題だ。福永武彦はゴーギャンの精神を捉えようとしているが、ゴーギャンその人の中に入っていこうとはしていない。おそら…

これはとても個人的な事情なのだけど

ぼくの生きている時代にとって二人の人物が大きな影響力を持っているのだが、それは個人的な事情なのでほとんどの人にとってはスルーされて当然のことになる。それでも書くのはその二人の人物が現代においてとても大きな影響力を示していて、同じように影響…

山本有三「真実一路」を読んで

今月の野々市町公民館による読書会で山本有三の「真実一路」を取り上げる。10人のメンバーで当番制で課題図書を選んでいくのだが、今月は古株でどちらかというとリーダー格のNさんが選んだ。先月はぼくが選んだカフカの「判決」でNさんは、実存主義の文学と…

魂について

魂は生と死を結んでそのどこかの領域で存在するものである、と語り始めてみよう。なぜぼくが魂が何かについて知りたいかというと、現代は魂がない時代であると、ある日本の革命家が言ったからだ。ぼくはもちろん革命家ではないが、革命家には時代を切り拓く…

カフカ「判決」を読んで(つづき)

カフカ「判決」を読んでの疑問にまず2から取り組んでみたい。2.ゲオルグの婚約者が、そんな友人がいるのなら結婚しなければいいとなぜ言ったのか? ここで友人がゲオルグの婚約者との結婚に深く関わっていることが示されるわけだが、どういう関わりか?ゲオ…

カフカ「判決」を読んで

昨日決心してやめたことがある。読んだ本から自分の感想や意見を持つのに、評論家やネットに載っている無名の人の「解説」や「感想」を読むことをである。確かにボキャブラリーが足らない時に、ちょっと心に響いた言葉を他人の文章から得ることはいいかもし…

「ダンス・ダンス・ダンス」を読んで

The Beach Boys - Dance Dance Dance (1964) 数日前に村上春樹の小説を読みたくなった。どうしてかとその時の心境を思い出してみると、どこへも行くあてがないのにどこかへ行きたくなっていたように思う。この何も起こらない現実から逃れて、自己省察の旅に…

自分の幸福と時代を生きること

少しブログへの投稿を休んでいた。自分では書かないが他人のブログはいくつか読んでいた。書くという作業はおしゃべりより面倒くささが伴うので、ブログには書くことがさほど苦痛でない人や自分の立ち位置がしっかりして自分の情報に価値を見出している人が…

小松左京著「日本沈没」を読む

好きな作家や尊敬する思想家の本を自分に取り入れるようにして読むことが多いのだが、たまには思想的には真逆ではないものの違う思考をする作家のものも読む必要があるとして、小松左京の「日本沈没」を読んでみることにした。これまで累計400万部の大ベスト…

「マチネの終わりに」を読んで

平野啓一郎には惹かれるものがあった。スローリーディングに関する新書を読んでいたからだ。作家の読み方を教えてくれるので当然正当性があると思って読んだ。細部というか、クライマックスを導くエピソードのような伏線に注意するといい、と言っていた。「…

「羊と鋼の森」をめぐって

この作品に本屋大賞受賞とか、人気俳優による映画化という話題性から出会ったわけではなかった。野々市市の読書会で課題本に取り上げられて、メンバーから今その小説の映画が上映中だとメールをもらうという、きっかけがなかったらおそらくぼくの読書範囲に…

「風と光と二十の私と・いずこへ」を読んで

今回読書会で取り挙げた坂口安吾の「風と光と二十の私と・いずこへ」はぼくにはとても面白かった。小説ではなくて自伝だから全て本当のことだと思って読んだ。戦前、戦中、戦後を生き抜いた文士というに相応しい生のドキュメントであるが、記録という意識で…

「こころ」を読み終えて

昨日「こころ」を読み終えていた。やはりすごい小説だった。15年ほど前に一度読んでいるはずなのだが、大筋の展開は覚えているもののほとんどを忘れていた。単に名作だったで特にすごいとは感じなかったように思う。今回はKの自殺した部屋に血しぶきが広がっ…

「アサッテの人」を読む

日本の現代作家では大江健三郎や村上春樹や福永武彦や井上光晴や村上龍や野間宏や丸山健二や埴谷雄高や小川国夫や辻邦生や加賀乙彦や真継伸彦や池澤夏樹などの小説を求めて読んできた。女性では石牟礼道子や米谷ふみこや金原ひとみや増田みず子などの小説を…