開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

読書記録

芸術と災害

今日も暑い。台風の影響なのだから仕方がない。とはいえ、自然の猛威には耐えられるインフラが整備されていてほしい。東京では電車が止まり、関東圏で停電が続くと大混乱になる。それが地震となると原発による恐怖にまで襲いかかる。21世紀にもなって自然災…

自分をつくるための読書

「星の王子さま」から 「金持ちになると、何の役にたつの?」「もし誰かが、ほかの星を見つけた時にそれを買うのに役立つのさ」「この人は」と王子さまはこころの中で思った。「あの呑ん兵衛と同じような理屈をこねているよ」(呑ん兵衛の理屈とは、なぜ酒を…

「スペイン警察隊のロマンセ」を巡って

馬はすべて黒い 蹄鉄も黒い マントのうえには インクとロウのしみが光る 彼らは鉛の頭蓋骨を持っている それゆえに泣くことはない。 エナメルの魂を抱いて 街頭をやって来る 猫背で夜行性で 彼らが引っかき回すところには どこにでも黒いゴムの沈黙と、 細か…

「荒野のおおかみ」を読んだ

自分の分をわきまえて生きることが真実の生き方だと思う。昨日ヘルマン・ヘッセの「荒野のおおかみ」を読了した。あまりにも自分を偉大なものとしすぎて、狂気の自由に生きようとしたと、今なら落ち着いていうことができる。作家は自分の経験と精神を使って…

ベルンハルト・シュリンク「朗読者」を読んで

読書には二通りある。娯楽のための読書と生き直すための読書である。前者は多くの人が楽しんでいる普通の読書であるのに対して、後者は読むことが生きることと直結している ことを示している。ちょうど「朗読者」のハンナのように、自分で本が読める喜びは至…

偽りの人生を捨てた男の物語

この世界では生きていくためには働かなければいけなく、何か職につくか自ら働く場を作り出すかしなくてはならない。アスリートや芸術家のように才能が年少時から認められればプロの道もある。研究者や学者の道もあるが、先生や周りの環境に恵まれている必要…

「嘔吐」ひと口感想

今朝サルトルの「嘔吐」をようやく読み終えた。のちに現象学に出会って「嘔吐」のテーマを哲学でやろうとして「存在と無」を書き出すことが予感できる小説だった。サルトルは意識に囚われていて存在にも意識があると感じているので、モノにも意識が取り付い…

村上春樹と福永武彦

引きつけられるようにして今日、「ノルウェイの森」を手にとって再読を始めてみた。 直子は最初から自分が死から逃れられないと決意している事がなんとなく分かり、ワタナベ君との接し方は誰かと似ているとふと感じられた。ああ、誰だろう、、、ぼくの記憶の…

何を読むのかについて

先に読むことについて書いたが、読むという行為の本質を微妙に外していたように思った。読むことについては何を読んだかを経験として分析しないことには、読む行為を説明したことにならない。単に小説を読む場合だけでなく、例えば政治情勢や相手の心を読む…

「村上春樹はむずかしい」

あえて文学的出発点という言い方で書いてみるが、言葉で自分をとらえて生きる時空間を作り出す最初の契機に、このところ関心が湧いてきている。村上春樹を定年退職後にふと気づいて読み始めたのは、同じ時代を生きて世界文学に通じる小説家をとりあえず読書…

福永武彦「ゴーギャンの世界」を読んで

次第に主題が形づくられてきている感触がある。「ゴーギャンの世界」を読み始めて感じた違和感を育ててみる方向の中で生まれつつある主題だ。福永武彦はゴーギャンの精神を捉えようとしているが、ゴーギャンその人の中に入っていこうとはしていない。おそら…

これはとても個人的な事情なのだけど

ぼくの生きている時代にとって二人の人物が大きな影響力を持っているのだが、それは個人的な事情なのでほとんどの人にとってはスルーされて当然のことになる。それでも書くのはその二人の人物が現代においてとても大きな影響力を示していて、同じように影響…

山本有三「真実一路」を読んで

今月の野々市町公民館による読書会で山本有三の「真実一路」を取り上げる。10人のメンバーで当番制で課題図書を選んでいくのだが、今月は古株でどちらかというとリーダー格のNさんが選んだ。先月はぼくが選んだカフカの「判決」でNさんは、実存主義の文学と…

魂について

魂は生と死を結んでそのどこかの領域で存在するものである、と語り始めてみよう。なぜぼくが魂は何かについて知りたいかというと、現代は魂がない時代であると、ある日本の革命家が言ったからだ。ぼくはもちろん革命家ではないが、革命家には時代を切り拓く…

カフカ「判決」を読んで(つづき)

カフカ「判決」を読んでの疑問にまず2から取り組んでみたい。2.ゲオルグの婚約者が、そんな友人がいるのなら結婚しなければいいとなぜ言ったのか? ここで友人がゲオルグの婚約者との結婚に深く関わっていることが示されるわけだが、どういう関わりか?ゲオ…

カフカ「判決」を読んで

昨日決心してやめたことがある。読んだ本から自分の感想や意見を持つのに、評論家やネットに載っている無名の人の「解説」や「感想」を読むことをである。確かにボキャブラリーが足らない時に、ちょっと心に響いた言葉を他人の文章から得ることはいいかもし…

「ダンス・ダンス・ダンス」を読んで

The Beach Boys - Dance Dance Dance (1964) 数日前に村上春樹の小説を読みたくなった。どうしてかとその時の心境を思い出してみると、どこへも行くあてがないのにどこかへ行きたくなっていたように思う。この何も起こらない現実から逃れて、自己省察の旅に…

自分の幸福と時代を生きること

少しブログへの投稿を休んでいた。自分では書かないが他人のブログはいくつか読んでいた。書くという作業はおしゃべりより面倒くささが伴うので、ブログには書くことがさほど苦痛でない人や自分の立ち位置がしっかりして自分の情報に価値を見出している人が…

小松左京著「日本沈没」を読む

好きな作家や尊敬する思想家の本を自分に取り入れるようにして読むことが多いのだが、たまには思想的には真逆ではないものの違う思考をする作家のものも読む必要があるとして、小松左京の「日本沈没」を読んでみることにした。これまで累計400万部の大ベスト…

「マチネの終わりに」を読んで

平野啓一郎には惹かれるものがあった。スローリーディングに関する新書を読んでいたからだ。作家の読み方を教えてくれるので当然正当性があると思って読んだ。細部というか、クライマックスを導くエピソードのような伏線に注意するといい、と言っていた。「…

「羊と鋼の森」をめぐって

この作品に本屋大賞受賞とか、人気俳優による映画化という話題性から出会ったわけではなかった。野々市市の読書会で課題本に取り上げられて、メンバーから今その小説の映画が上映中だとメールをもらうという、きっかけがなかったらおそらくぼくの読書範囲に…

「風と光と二十の私と・いずこへ」を読んで

今回読書会で取り挙げた坂口安吾の「風と光と二十の私と・いずこへ」はぼくにはとても面白かった。小説ではなくて自伝だから全て本当のことだと思って読んだ。戦前、戦中、戦後を生き抜いた文士というに相応しい生のドキュメントであるが、記録という意識で…

「こころ」を読み終えて

昨日「こころ」を読み終えていた。やはりすごい小説だった。15年ほど前に一度読んでいるはずなのだが、大筋の展開は覚えているもののほとんどを忘れていた。単に名作だったで特にすごいとは感じなかったように思う。今回はKの自殺した部屋に血しぶきが広がっ…

漱石「こころ」再読中

今月の野々市市公民館の読書会の課題図書が漱石の「こころ」なので、今18章まで読んだところで、少し感想を書いてみたくなった。(というのは自分の感じ方を言葉にして「中」に入ってみたいということなのだが)今朝起きると、夢を見ていたことに気づき、全…

「アサッテの人」を読む

日本の現代作家では大江健三郎や村上春樹や福永武彦や井上光晴や村上龍や野間宏や丸山健二や埴谷雄高や小川国夫や辻邦生や加賀乙彦や真継伸彦や池澤夏樹などの小説を求めて読んできた。女性では石牟礼道子や米谷ふみこや金原ひとみや増田みず子などの小説を…

マイ・リーディング・イヤー

大江健三郎は自分の文学上の導き手の作家の本を集中して3年かけて読む、とどこかで書いていたように思う。おそらく3年かけてその作家の本を全て読むのだろうと思う。あまりぼくは大江健三郎のヘビーな読者ではないが、ウィリアム・ブレークやイエーツはその…

福永武彦「死の島」を読んで

被爆者個人にはどのような生が営まれるかを20世紀小説形式で描き切った「死の島」を2週間弱で読んだ。(図書館の貸出期限は2週間だった)小説中の現在は昭和29年であるが、それを昭和46年に福永武彦は最後の長編としてこれ以上のものは残せないと本人が述…

新書2冊から

今日ほとんど唯一の外出となっている昼食の蕎麦屋のあと、すぐには自宅に戻りたくないので本屋に立ち寄ってふと目に止まった新書を買った。タイトルに「肩書きを捨てたら地獄だった」とあったからだ。数百億円の予算を動かす、元通産省官僚の独立までの赤裸…

加藤周一編「私の昭和史」を読む

戦前、戦中、戦後を生きた普通の人たちの自分史の投稿を加藤周一が編纂したもの。これ一冊だけを読んでいるわけではないが、三日かけて読み終える。15人の私の父に当たる年代の男女の投稿でそれなりの文章力を備えた人で、客観的に自分と世界のつながりの中…

井上光晴著「地の群れ」を読んで

戦前にはプロレタリア文学というのがあり、その代表的作家である小林多喜二の「蟹工船」は2008年に再脚光を浴びて、その年の流行語大賞にノミネートされていたらしい。ぼくにとって小林多喜二は特高から受けた拷問の凄さのイメージが強く、小説はなかなか読…