1968年はどういう年だったかを自分の記憶にある断片との「接合」をやってみたいと思い、 村上龍の「69」を読むことにしたのだった。この小説を実は長い間シックスナインと呼んでいて読む気にならないできていたが、シクスティナインだった。それはあの1969年のことを描いているのだと知ったのは本が出てから30年後だった。
村上龍は「69」のあとがきで、「ひょっとしたら日本社会は1969年あたりからあまり変わってないのではないかという疑問を抱いている」と書いている。つまり人々の基本的な考え方や価値観はあまり変化していないと言っている。そうかもしれないと思った。ぼくは村上龍と一つ違いだが、あまり齢をとったと感じないのはそのせいかもしれない。
新装版「69」には金原ひとみが寄稿していた。まだ金原ひとみを読んでいなかったので、ついでにといっては失礼ながら芥川賞受賞作の「蛇にピアス」を読んでみた。これは図書館で探し、舌の先を切り蛇のような舌にしてピアスをするような若者の世界を描いていて、引き込まれて2時間で一気に読んだ。こんなことは近年めずらしかった。ぼくの価値観が少し変わったと思う。