開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

ある帰還者の街ブラ

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40年近く居た街のはずれの工業団地にある「収容所」から出て帰ってきてみると、街はそのままあって何が変わっているかすぐには気づかなかった。風景はそんなに違ってない気がしたが、しばらくすると確かにバージョンアップされていることが分かる。ただ街は綺麗になった分、空っぽで情念というものがない。ニューヨークがサンフランシスコになったような感じだ。身なりはそれなりにシンプルにまとめられていて、一人一人同じように収まって見える。高齢者ばかり目につくようになったのは、これまで出会うことのない時間帯にいたからだ。街に労働者風の男の姿が見えなくなった。男の学生が見当たらず、どこにも女性ばかりとなっていた。それは女のような男が増えてそんな印象を持ったのかもしれなかった。

映画館や書店が地方都市では郊外に移っているので、ファッションや雑貨の店しか残らず女の子ばかりが歩いていることになるのかと思われた。最近の金沢は街に外国人の方が多いような日もあるくらいだ。実際は目立つから多く感じるのかもしれないが。40年前には金沢にもジャズ喫茶が3軒あったが、今は一軒残っているだけだ。この前その店に友人と入って昔話をしていて、店のマスターと目があった。ぼくが学生のころ、マスターは大学紛争で緊張関係の中に置かれていたころの状況を知っているらしいと思わせた。一瞬完全にからだの動きが止まった。

その店の入り口のボードには岡林信康のライブを知らせるチラシが貼ってあり、友人はその日をメモしていた。