人生は短い。何かものになることを天才でもない限り、多くはできない。自分の好きなことを思いついて次々にやっていても、ものになることはないだろう。周りがやっているから自分も同じことをやろうとする人は、何もものにならずに一生を終えるだろう。自分がすごいと感じる他人の仕事をいくら解説したところで、自分のやり遂げた仕事にはならないだろう。自分の生きる固有の生は凡人にはせいぜい一つのことしか成し遂げられない、と思う。それはだんだん確信に変わるように思える。
モームの「月と六ペンス」を読んだ。ストリックランドはタヒチで絵を描くことで自分の生を全うした。田中一村は奄美で日本のゴーギャンになった。生前に売れることはなくても絵を描いて死ぬことができた。ランボーは自分の詩を描いた後は、潔く詩を捨てて放浪した。唯一者として生きることを自分に求めたい。