文章を書く動機のひとつとして、心地よく時間が流れてから普通の時間に戻った時に、もう一度その時間を文章の中に取り戻したいという気の起こることが挙げられる。昨日の午後ふと思いついて、妻と二人で金沢の弥生地区の裏道を散歩(自宅のある野々市から金沢の有松まではバスに乗って)した。なだらかな坂道が多く狭い路地は途中で行き止まりになることもあり、1時間ほど歩いて疲れてファミマで休む。ホットコーヒーと肉まんを食べた20分ほどが、小さな幸福感を二人で共有したその時間だった。ごく手軽で身近でしかも非日常もなくはない、年金生活者で地元の人間ならではの時間の過ごし方。狭い迷路という空間の世界遺産はスペインのトレドが有名だが、金沢も戦災に合わずにすんだ街並みにはトレドほどではないにしても、古都の非日常を味わえる路地があちこちにあって貴重な遺産と言ってもいいのではないだろうか。この路地裏散歩は第二の人生の楽しみの一つになりそうだ。