開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

ベルンハルト・シュリンク「朗読者」を読んで

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読書には二通りある。娯楽のための読書と生き直すための読書である。前者は多くの人が楽しんでいる普通の読書であるのに対して、後者は読むことが生きることと直結している ことを示している。ちょうど「朗読者」のハンナのように、自分で本が読める喜びは至高の体験となるはず なのである。ハンナは朗読を聞いて文字を覚えるという体験をしている。主人公の「ぼく」が本を朗読した テープをハンナに送る。ハンナはその本を図書館から借りてきて、音声と文字を照らし合わせながらゆっく りと読んでいく。気の遠くなるような作業を通して文字を覚えていくのに、刑務所はハンナのような人には 最適な場所だったかもしれない。最初の読書によって文盲から少しづつ解き放たれていく時、自分の中に世 界が生まれる。現実世界とは違うもう一つの世界に生きることを覚え始める。それは読書によって生き直すことだ。 しかし文字を覚えて文盲の時と現実世界が違うように見え始める時、逃げる場所がなくなったのではないだろうか?ハンナは文字が読めるようになり意味がわかるようになると、周りが自分を圧倒する意味で押しつ ぶされそうになったのではないだろうか?刑務所から刑期を終えて出ることになって、接見の場で唯一の味方だと信じた「ぼく」に冷たく距離を置かれた時、本当に絶望して自殺したのではないかとぼくには思えた。