以下は、村上春樹を批判した文芸評論家、黒古一夫氏の記事の一部である。これはこれまで何となくぼくの心の隅に居続けている疑問でもあった。
高度に発達した資本主義社会(都会)に生きる人間の「喪失感」や「疎外感」、「孤独感」、「絶望感」を描くことに成功し、若者を中心に世界中に多くの読者を獲得した村上春樹であるが、ではそのような「喪失感」や「孤独感」などを内に抱いて生きる若者たちに対して、村上春樹の文学はどんな「生きる指針・ビジョン」を示してきたのか、ただその文学世界に存在するのは現状を「消極的」に追認するだけのものだったのではないか。