38年間の会社勤めの生活は、なぜ失敗だったと仮定するかというとその間自分が自分でなかったように思えるからだ。例えば自分が管理職になって部下との関係を作ろうとして、自分の性格を非人間的な殻に当てはめようとした。普通に先輩のように温かく接することをせず、距離を置いていた。分からないことを親身になって何でも相談にのれていなかった。デザイナーという職種では、スキルの差が「作品」の主観的な優劣を呼び込むことがある。下からのプレッシャーを感じる職種だと今書こうとしたが、実力が問われるのはどんな職種でも同じかもしれないと思い直した。会社という環境は、四六時中周りが競争状態でもあることを今になって改めて思う。そのストレスに柔軟に対処できなければそもそも社会人として生きていけなかったのかもしれない。多かれ少なかれ、どんな企業もブラックな要素を持っているし、うまくそれを切り返したり切りぬけたりできるタフさを備える必要があったということなのだろう。
だが、そんな環境は今からするとひどく人間性が失われていたことが分かる。よく考えてみると、自分を保ち続けるには周りの誰かを傷つけていたと思う。傷つけ合うことに不感症になっていたと思われる。