開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

本のない生活

ここ数日でぼくの中に微かな変化が起きている感じがする。夢の芽生え始めているような甘味な雰囲気がどこかに感じられる。冬の辛さから解き放たれる時期を人生で初めて迎えようとする予感がする。もう我慢することがなくなって、物理的な快適さを味わうのに少しの後ろめたさも感じなくていいというような、自己放棄を許している。今日2,950,000円で新車を契約した。年金生活者で最後の大きな買い物である。サラリーマン時代の方がどちらかというと貧乏生活だったと感じるくらいだ。歳をとって欲望が小さくなったせいかもしれない。先日浴室のなかの温風ヒーターをつけて湯に浸かっていると、便利さというのはやはり避けがたいと観念した。とても変な想像だが、シベリア流刑地や「カディンの森」のどこかにあるポーランド将校の収容所の、零下40度の世界を想うと21世紀の便利さに至福感が湧いてくる。ぼくのちっぽけな精神などはいかにも軟弱なものだ。ちっぽけな精神などはなくてもいいという誘惑にかられる。