開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

林俊介さん

かつてはノートに何かを書きつけることでかろうじて生きている証を得ていて、それがブログという仮想ネットワークに場が移って、自分との対峙に第三者が観客のように眺めるような空間に、いま同じように何かを書きつけようとしている。微妙に生きている証が変化する。自分しか読まないノートから不特定多数が読むかもしれない「ノート」に変わった。場だけが変わったのではない、時間があるいは時代が変わっている。でもこの何かを書きつけたいという衝動はあまり変わらないような気がする。

昨日、金澤倶楽部というローカルでは有名な雑誌の創業者のエッセイ集を読んだ。林俊介という名前はその道では知らない人はいないし、ぼくはこの人の友人の一人から噂を聞いたことがあるくらいの関係がある。友人のA は林さんから「お前は青い」と言われそれを随分気にしていたのだった。青いと言われるほどの歳ではもちろんなかった。このエッセイ集で初めて林さんの少年院時代のことを知った。16歳で過酷な制裁(指導ともいう)を受け、2度か3度か自殺を試みたことのある不幸から這い上がってきた男からは、大概の周囲の人間は青く見えるのだろう。その当時どういうわけかぼくはライバル心のような感情を持った気がする。何かを書きつけることにおいて遥かに先に進んでいた人に、ライバル心を抱くこと自体おこがましいのだが、林さんが村上春樹村上龍の小説は全く読む気がしないと書いていたので、ぼくとは住む世界が違うのだと思った。それで離れて見ることができた。

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