開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

Can you talk about your dream?

大学を卒業して兎にも角にも地元の小さな企業に就職して落ち着いてきた頃、高校の時に付き合っていたガールフレンドと住宅街の喫茶店で話すことがあった。彼女は金沢の文化センターで講師の口を見つけて、デザインを教えているということだった。その時もらった名刺のデザインがシャレていて、小さなものにも気を配ってデザインすると存在感が増すということが納得された。ぼくはといえば、あまり気の乗らない職場の様子を喋って話が盛り上がらなかった。久しぶりにあったのだからもっと大学時代のこととか色々話すことがあったはずなのに、彼女が何も訊いてこなかったこともあって、お互いの過去のことは何も話さなかった。話したのかもしれないがその覚えが全くない。彼女が好きな音楽のジャンルを訊いてみたら、女性のジャズボーカルだということだった。そういえば高校の時、野外のジャズコンサートに一緒に行ったことがあった。渡辺貞夫や日野皓正や菊池雅章などが出ていた。夕方から始まったコンサートで、帰りが遅くなってバスがなくなってしまって困っていると、スタッフのバスに乗せてもらえた。サインもしてもらって、彼女の家の近くの兼六公園下で降ろしてもらったことがあった。

ぼくにはその頃なんの夢もなかった。ピークの時代は過ぎて何も起きない日常をその日暮らしするしかなかった。仕方なしにその頃流行りだしたテニスやスキーを時間つぶしに始めていた。初めて県外のゲレンデで目撃した活況は、それまで冬眠するしかなかったぼくを幾分目覚めさせはしたが、スキーはそれほどうまくならなかった。

話がそれてしまった。とにかくぼくは喫茶店で勢いよく話すことができなかった。彼女を引きつけてどこかに連れて行くことができなかった。