開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

三島由紀夫は嫌いだ

金閣寺」はようやく半分近くになった。主人公の溝口の大谷大学で出会う柏木という男が気持ち悪い。内飜足とされるが、溝口に向かって自身の童貞捨ての経験を披露するくだりがある。不具と美女のおぞましい関係に読者を導こうとする作者にぼくは馴染めない。三島が描く女性に自身の早熟な文学少年時代が反映されていると見るのが自然だと思うが、それはぼくにはこれまでまるで身近に感じたことのない感性だった。その登場する女性に女性を感じることができず、これまで世界文学で描かれてきた馴染みの女性像と完全に異質のものだ。端的に言えば肉体に熱を少しも感じない。恋愛というには程遠く、三島にはエロスは劣情に属するもののように感じられたのではないかと疑われる。しかし、デヴィット・ボウイは三島の愛読者だったという。