開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

あなたは閉ざされているか

ぼくが「ペスト」を読んだのは、高校一年の夏休みだった。最初に「異邦人」を読んでしばらくして同じカミユのものが読みたくなり、単行本の「ペスト」を読んだ。上下二段組だったから文庫本でなかったのは確かだ。「異邦人」の舞台はアルジェリアでカミユはアルジェリアの人という印象が強い。乾いた空気や煙草の臭いがする小説で、夏に読むとうまく小説内に入ることができる。「ペスト」を読み終わった時、重い疲労に体が埋め込められているのにじわっと力が少しづつ湧いてきて、しばらく回復感に浸ることができたように思う。あの小説にはずっと閉塞感があった気がする。最後にそれが溶けて解放される。

ところで今、世界は新型コロナ・ウィルスで閉ざされている。それが「ペスト」の状況と似ているから今読まれているのだと思う。しかし不思議なことにぼくには、そんなに閉塞感はない。実感としてないのだから仕方がない。もともと自閉気味だから閉じこもっていても平気なのはある。とりあえず家にいて、外出から帰ればよく手を洗っていれば安心と思っている。というかそれしか手がないということなら簡単な話ではないのだろうか?(あくまでぼくは自分のことしか言えないので)

もう一つ考えられるのはインターネットがあるということだ。インターネットで繋がっているという安心感がぼくにはある。あなたはどうだろうか?ネットではこの期に及んで、第三次世界大戦が起こるのは歴史的必然だというような、いい加減な事を言う元官僚もいたりするが、振り回されたりしなければいいだけの話だ。テレビでこれまた(自分の仕事を奪われないように)自己保身からコメントする無責任な人たちの言に、信用を置かなければいいだけのことだ。「事実」と「思うこと」は注意深く分けて受け止めなければならない。あなたはどうだろうか?