開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

「死霊」第2章を読む

「死霊」はこの前から再読し始め今日第2章を読み終わる。やはりほとんどを忘れていた。大方の評判は哲学小説で観念的であって、筋もなく難解であるというものだ。そういう偏見にぼくもどこかに影響されていた。それはいい意味で裏切られた。中の会話も人物も生き生きして、筋もちゃんとある。驚いたのは津田夫人の描き方がうまいのである。中年女性の可愛らしさも仕草も含めて描き出している。以下彼女の興奮気味の心のつぶやきを引用する。

そう、これは私が自分だけで思いついたことだわ、それは___世の中を知らぬ貴方達だけにしかないってものが、そんな貴重なものが貴方達にあるってことだわ。そう、そうだわ。貴方はまだそんなに若いのにめそめそしてたら、駄目なんです。綿屑がはみ出たぼろ人形を立派な、可愛いい人形と思わせるのは、そう、貴方にある情熱しかありやしないんですよ、安寿子さん!

 

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