開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

小説の効きめ

何のために小説を読むのか、どうして時間を惜しむことなく読んでも後悔しないのか。面白かったといえば済むのが大かたの小説読みの流儀なのかもしれないが、あえてぼくは効力を問う。小説にしか与えられない良さというものがある。映画や芝居を見たあとの感動よりも持続的な感情や倫理的な清々しさや、自身へのプライドを賭けた戦いや、弱者を助けようとする勇気など小説から得られるものは、限りなくある、と思う。そんな良さを妻と共有できないことが、これまで不満だった。妻はリアリストでほとんど本を読んだことがない。だからメールを打つのにどんな漢字だったかをよくぼくに問い合わせる。(本を読まないと漢字が覚えられないとぼくは妻と話し合っていた)ところが最近ある短編集をあることから手にした。「NHK国際放送が選んだ日本の名作」というアンソロジーなのだが、これを読んでぼくの古い文学観が少し変わった。これだと妻も読めるかもしれない、、、いや、読んでくれるかもしれないと頭のどこかで弾けるものがあった。文学に馴染むことがこれまでなかった人にも、小説というものの独特の効きめに触れられるかもしれない気がした。これを妻に勧めてみようと思ったら全く久しぶりにドキドキする感じになった。いつ、どのタイミングでどんな言い回しで勧めたら妻はその気になってくれるだろうか、あれこれ考えた。今日、またメールを打つのにどんな漢字だったかを聞きに来たときに、「あの、、、よかったらこれ読んでみない。全然短くてすぐ読めるから。読んだらあったかい感じになるよ」と言ってみた。妻は受け入れ、「ありがとう」と言った。でもそのあと何日たっても読んだ様子が見られなかった。

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