開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

なりたいと思う男がいない

これまで「なりたいと思う男」はみんなどこか偉大で、憧れの存在だった。いつまでも憧れてばかりで少しも近づくことができなかった。サラリーマンの時、農家の農業法人社長に出会って、身の丈の自由さ、自立心に学ぶところがあったが、読書によってそのような身の丈にあった自立した人を見つけることがなかった。マーケティングではロールモデルを設定するという方法があるが、ぼくの実人生においてはロールモデルを見出せて来なかった。美大に進んだ時に、ここは自分の居場所ではないと感じた時がぼくの人生の分岐点になっていた。その時に「なりたいと思う男」が見出せていれば、ぼくの人生は変わっていたことだろう。親父は独学で家具作りから大工になったが、ぼくは職人世界に興味がなかった。親戚に学校の先生が3人いたが、先生にも感じるものがなかった。今考えると美術の先生には小学校、中学、高校で親しくしてもらったので、やはり美大への進学は自然だったかもしれない。でも才能を強く認められたわけではなかった。自分を信じられるほどの才能はなかった。才能がないのは確かだが、親父が独学でもがきながら必死で大工の技能を身につけたような、独学の能力は受け継いでいるかもしれない。独学者のロールモデルならいそうな気がする。