開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

Mについての序章

Mはぼくにとって最大の隣人だ。最大というのは他者の中でもっともぼくに影響を及ぼす存在だということだ。ぼくとMは妙に気があった。彼についてぼくはこれまで誰にも話したことはなかった。大学の同級生にはこの前集まった時に、大学時代の彼の秘密を喋ってしまった。みんなびっくりして、話は大いに盛り上がった。何しろ40年以上誰にも知られていないことで、ぼくは固く彼から口止めされていることだった。それはクラスで目立って神秘的で女優志望のTさんが、彼に結婚を迫っていたらしいというものだった。なぜぼくだけがその話をMから聞くことができたのか、きっとぼくだけがクラスの中で孤独で誰とも付き合っていなかったMの、唯一の友人だったからだろうと思う。Mはその頃、浮いた存在だった。そんな彼の人物評をこれから語ってみることにしたい。そうすることで長年の彼の影響下から脱したいと思う。