好みの作家があり、純文学に限っても様々な主人公の物語があって、一気に読めるものに出会うことは稀で、途中で投げ出してしまうこともある。今日読んでいたのは小説ではなく、評論だった。武者小路実篤の評論でトルストイからの影響で、華族でありながら自らの階級が虐げられた人の犠牲の上に立っているという引け目を感じて、所属階級からは没落と思われる人生に進んでしまうことになる。母親からは「もう少しましな女がありそうなものじゃないか」と言われてしまう女性を妻に選んだり、空想的な理想郷を求めて実際に村を作る事業に突き進む。当然問題ばかりが起き挫折の人生になるが、多くの小説や戯曲を残していて、大正時代を画する作家として名を残しているから成功はしているのだろう。おそらく実業家から見れば、勿体無い生き方に見えるだろう。価値観の問題だと言ってしまえばそれまでだが、人生は短く、色々違った価値観で生きられるものでなく、やはり振り返ってみればそう生きるしかなかったような、一つの生き方を生きるしかないように思われる。、、、ここまで書いてきて、ぼくは自分がどんな小説を読みたいかが分かったような気がする。色々紆余曲折はあっても、その人に運命付けられたような人生というものがあるはず、という物語が読みたいのだ。
では、ぼくの場合はどんな人生の物語なのだろう?きっと決まっているのだろう、でもどう決まっているというのか?サラリーマンを38年やって、定年退職して7年経った。ここからまだ決まっていない人生が始まるのか?