もう初夏のような5月初旬の午前、ぼくは散歩したくなって普段車で泉野図書館に行くのを、車を泉野体育館の駐車場に置いて歩いて行くことにした。泉野体育館の駐車場から狭い通路で外に出られる出入口があり、そこを出ると閑静な泉野出町の住宅街の路地を通って泉野図書館まで行ける。この一帯は金沢でも中流家庭の家屋が並んでいて、散歩してそれぞれの家の佇まいを眺めるのが好きだった。定年退職後暇に任せて金沢の街をよく歩いた。よく知られているように金沢は京都と2か所だけ空襲に合わなかったので、旧市街地は昔の街並みが残っている。家はほとんどがリニューアルか、建て替えられているが区画は昔のままで道は狭く入り組んでいるところが多い。迷路のような路地もあって散歩にはもってこいなのだ。今日歩いているとある一角で、日傘をさして歩いて来るこの地区の(普段着だったから)夫人と出くわした。その時ぼくの中で懐かしい夏の風景が蘇った。住宅地の濃い日陰ができた道の端を、日傘をさした女性が静かに歩いて過ぎて行く様は一瞬時間が止まって、古き良き昭和が切り取られてぼくの周囲を取り囲んだような感じだった。ああ、この感じは中学生から大学生までの夏休みという特別な期間に与えられた、貴重な時間としてぼくの人生に刻み込まれている。この感じを書き留めておきたくてブログに書いてみたが、今のぼくの筆力ではどれだけ伝わるものに書けたか心許ない。夏は夏休みがあるから特別な季節のように感じるのだが、あなたはどうだろうか?