開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

源氏物語に集中する

世界最古の小説が日本で生まれたという、歴史的事実をどう捉えるか。神話や経典や説話や哲学書ではなく、物語を推進する心理や風習や情緒や感情が語り手によって描かれる、文体を持って構築される小説形式が11世紀に出現した。それは英国の人文研究家によって驚きを持って近代に蘇らせられた。少なくとも大衆が読むようなきっかけを作ったのは、ウェイリーという英国人らしい。ぼくが源氏物語をどうしても読む必要があると思ったのは、この歴史的事実に興味を持ったからには違いないが、もっと卑近な理由は源氏物語を読まずに死ぬのはどうしても後悔するだろうと思えたからだ。それだけぼくには源氏物語の影響力が大きいと感じてきたのだと思う。それは読む前に感じていたことだから、実際の中身とは自分の読解力を経ての判断と食い違うかもしれないことだ。しかし、若紫のところまで読んでぼくも驚きを持ってその世界のリアルさを感じている。リアルさとは作り物ではない、という感じのことだ。まだ全体から見れば序章というところだが、そこまで読んだだけでも、空蝉や夕顔や藤壺光源氏の必死な関わりが驚きだった。藤壺との場合はバレると実際死を覚悟するほどのことなのだから。

読書には発見する喜びがある。源氏物語は発見に満ち満ちている。今度、野々市市の恒例の文化祭に源氏物語研究もされている、大学の文学部教授に講演をお願いすることになった。この機会を縁と感じて大切にしたいと思っている。しばらくは読書は源氏物語に集中したいと思う。仕事は中途半端にしてはいけないと、前回公演の時の唯川恵さんから作家修行のアドバイスという形で、一つを終わらせてから次をすることというコメントがあった。ぼくはすぐ横道にずれてしまう悪い癖があるから。