開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

そよ風と共に思い出す

普段と変わりない何の予定も無い日の午後、リビングの引き窓からカーテン越しにゆらゆらと風が入ってきた。その爽やかさが何かを思い出させた。68歳にもなってくると若さは格別の価値を持つ。ふとしたきっかけからイメージが沸き起こる。今ほどそのイメージは50代の自分の関心ごとだった、「山のふるさと」につながった。その頃小さいながら戸建てのマイホームを建てたのだった。共稼ぎで子供がいなかったぼくたちは二人で土地を買って家を建てた。その時本当の落ち着きというものを体で感じた。それまでの長い間ずっと中空を彷徨っていたことが実感された。嘘と思われるだろうが、実際に我が身に起こったことだった。大地にしっかり足を踏みしめる、ということの意味が肌で分かった。それからぼくの価値観が大きく転換した。水上勉の「山の暮れに」という、駐在所の警官が主人公の小説が身にしみた。土地という大きなものに初めて出会ったような気がした。自分一人でも孤独を感じないで、ずっとじっとしていられた。あれは不思議な経験だった。その時の瑞々しい臨場感を今日、そよ風と共に思い出した。

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