開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

読む幸福な時間

今ほとんど満たされて平穏な心の状態だ。何か書きたいことがあるわけじゃない。記録しておきたいとも何も思わない。本も読みたい気がしない。読めないわけでもない。ちょっと思うのは、こんな平穏な状態は普通書くのが難しい気がして、だったら挑戦の意味で書いてみようとしたのかもしれない。普通は何か不安要因があって、それを取り除こうとして心の中を探るようにして書くことが多いと思う。少なくとも自分の場合は。満たされた心身状態の原因の一つは、今読むべき小説がはっきりしたことがあるかもしれない。本格的な純文学の小説で、中村真一郎という一流の作家が渾身を込めて書き上げた長編四部作「四季」「夏」「秋」「冬」である。定年(作品内では「停年」となっている)がテーマの一つにもなっている。人生の収穫期を描き切って老年を迎えたいという作家が主人公だ。これまで3回ほど読み始めて挫折している。今回初めて深く入り込めたので、読み進められそうな自信が持てた。その自信による安心感が、今の心の平安状態を作り出していると思う。読むべき小説が読めるという幸福。ぼくにとっては久しぶりに訪れた豊かな「時間」である。

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