何にも用のない夏の日の夕方
ふとあの頃の曲が浮かび、Spotifyの声が漂い出した
君は少女だった
乾いた風に髪をなびかせ
日焼けした肌の無垢な淑やかさを
誰はばかることない爛漫さを中心に置いて
ぼくを虜にしようとたくらんでいた
面影や匂いや空気は時間に込められて
どこかに保管されているらしい
もう恥ずかしさや初々しさに
改めて弁解することもあるまい
素直に認めて、今でも消えていないことに驚いてみよう
ぼくは少年のこころというものが
これまで歌われずに自ら捨て去っていたことを
もったいなく思う
子供には違いないが子供より自由を知っている
まだ男の肉体にはなっていないが
しなやかなバネと精悍な横顔に
共同体から抜けようとする野心を持っている
あの頃の君ともっと話がしたかった
途切れ途切れの言葉に
今だったら考えられた接続詞や思いやりの修飾語などを
付け加えることもできたろうに
もっと親切に、海のような寛容さを差し出したろうに
人生って脚本家が描いたような仕掛けには
永遠にたどり着かないものさ。