開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

考えられた接続詞や思いやりの修飾語

何にも用のない夏の日の夕方

ふとあの頃の曲が浮かび、Spotifyの声が漂い出した

君は少女だった

乾いた風に髪をなびかせ

日焼けした肌の無垢な淑やかさを

誰はばかることない爛漫さを中心に置いて

ぼくを虜にしようとたくらんでいた

面影や匂いや空気は時間に込められて

どこかに保管されているらしい

もう恥ずかしさや初々しさに

改めて弁解することもあるまい

素直に認めて、今でも消えていないことに驚いてみよう

ぼくは少年のこころというものが

これまで歌われずに自ら捨て去っていたことを

もったいなく思う

子供には違いないが子供より自由を知っている

まだ男の肉体にはなっていないが

しなやかなバネと精悍な横顔に

共同体から抜けようとする野心を持っている

あの頃の君ともっと話がしたかった

途切れ途切れの言葉に

今だったら考えられた接続詞や思いやりの修飾語などを

付け加えることもできたろうに

もっと親切に、海のような寛容さを差し出したろうに

人生って脚本家が描いたような仕掛けには

永遠にたどり着かないものさ。

 

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