世界に飛び出すまでのモラトリアムの時期があった
どんな人にも孤独が初々しい頃があるのだろうか
もしこれを読んで呼応してくれる人がいるだろうか
憧れに身を焦がすほどの疾風が過ぎ去ったころ
木枯らしが落とした樹の葉たちの路を
上は萌黄色のセーターを着て、下はコーデュロイのパンツに包み
素足にスニーカーを履いて歩いていた
現実には誰とも出会わなかった
でもいつも誰かがいて寂しくなかった
スタンダール気取りで熱烈な手紙を将来の貴婦人に送っていた
長い手紙には二人だけの場所が想像されていた
言葉による気配の定着に夢中になった
果たして返事は来て初めての侮辱を味わった
大いなる時代錯誤にも甘い記憶が付いている
静かに蘇るかけがえのない日々
蘇るたびに新しくなる
重なりが思いがけない息吹を生む
多くの詩人は高踏を複雑にして思想に高めたが
失ったイノセンスの風はあまりにも強く
無情とニヒリズムの温床をつくった
少女の瞳と息と低い声に
閉じられたいのちを与えてもいいのではないだろうか