あっは、 ついにわかったぞ
サルトルが言っていた自由の本質ってのが
なんのことはない、意識って奴だ
意識しかない世界に俺は
生まれてこのかたずっと生き続けてきた
何となくずっと寂しかったぜ
別名を無と言うんだから
何をしても自由なら何をすりゃよかったんだ?
理由や根拠ってもんが欲しいってもんじゃないか
無口な職人を親にもった息子は
人生の見本なんてある筈もなく
無情な20世紀に放り出されたってわけさ
母親が優しすぎたかもしれない
もうちょっと具体的なディテールで
躾けてくれりゃ寂しい思いをしなくても済んだかもしれない
おとなしいガキの頃
親父は俺を映画館に連れて行ってくれたことを
今日突然思い出したんだ
そしたら無性に親父のことが分かり始めて
泣きたくなってしまったよ
あれから人生っていうものは何も変わらないことが
わかってしまった
永遠の自由の繰り返しだけが人生ってもんだ
耐えろ 耐えろ 耐えろ
忍耐の朝に昼に夜に
果てしなく ともかくも 歩いて行こう