石川県七尾市には、全国の旅行会社が投票する「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で36年連続「日本一」に選ばれた老舗温泉旅館、加賀屋がある。その和倉温泉街の近くの運動公園テニスコートでは、佐藤直子が主催して毎年国際女子テニスオープンが行われている。毎年7月には、国際的なジャズ祭の一つモントレー・ジャズ・フェスティバルが行われる。同じ七尾市にある七尾美術館では、七尾市出身で狩野派と覇権を争った長谷川派の創始者、長谷川等伯の企画展が27年続けて行われている。また七尾市から少し離れた中島町には、仲代達矢率いる無名塾の拠点で、7メートルの開閉式背壁面(それが開くと林の中の空き地が現れる)で有名な演劇専用舞台を備えた、能登演劇堂がある。このように数えると能登の中核市として目玉となる施設やイベントがあることがわかる。しかしそれらは文化的な資源ではあっても、日常の中に生活空間としてあるわけではない。生活空間としてのにぎわいがあるわけではないので、通常は閑散としているのは多くの地方と変わらない。昨日、読書会で恒例となっている文学散歩で七尾美術館と能登演劇堂を訪れてみて、最初に感じたことはそのことだった。でか山巡行で勇壮な青柏祭もあってハレの時はにぎわうのだが、ケの時は寂しい能登の街になる。やはり日常ににぎわいがなければ快適な都市にはならないだろう。金沢にはそれがあり、文化的な格差は否めないのも事実だ。ゴールデンウィーク中に訪れた滋賀県の佐川美術館は、同じ地方都市型美術館であっても七尾美術館より格上であった。やはり投入された資金がものを言うのは仕方ないにしても七尾美術館は世界に通用するコンセプトがそもそもない気がする。長谷川等伯にしてもルネサンス期のイタリアに匹敵する画聖として顕彰するくらいであってもいいと思う。、、、こんな批評をするつもりはなかった。案内してくれた美術館学芸員や無名塾塾生の熱い解説に、賛美を込めて感想を書くつもりだった。とにかく能登の人々の粋の良さにはリスペクトを惜しまない。