ほんとは誰とも似ていなかった
それを突き詰めていくと一人ぼっちになるから
少しだけ自分に嘘をついて
みんながかっこいいと思う詩人や思想家を真似てみようとした
世界が広がるような気がしたが決してほんとではなかった
どこか透明で果てがなかった
ちょっとは親しげに声をかけてくれたが
信用はされてないことがすぐに分かった
このままこんな風に進んで行った先には何があるのか
分からなかった
青春の時間だけが過ぎていった
きっと何かにぶち当たったはずなのであるが
そこでほんとの自分に出会ったはずなのだが
今ではもう分からないその経緯がどんなだったか
途轍もない自己放棄だったかもしれない
勿体無いことをしたかもしれない
でも何も無いところに立つことはできない
誰にも相談できなかったし相談の言葉がなかった
ただ一人そこにポツンと存在という位相に佇むしかなかった
偶然に身を任せ述語人生に従ってみる
そうしてFに出会って結婚した
一人が二人になることの展開が面白かった
住処があることで帰ることができるのは
驚くべき撹乱を内部にもたらした
生まれ変わったのだ
そして誰とも似ていない自分を失った