ヘーゲル関連以外の本は読まないとした禁を破って、心の中の郷愁の源泉を辿るようにして再読してしまった。でも読後の感慨は幸せに満ちたものだった。こんな風ではぼくのヘーゲル研究なんて大したものにならないだろう。、、、しかし、行けるところまで行きたい、簡単にはやめない。
定年退職して7年経って69歳の今
ぼくは元気で、
ひょっとしたら今が人生で一番いい時かもしれないと思うほど、
こころが満たされている。
自分が自分にぴったり重なって、
頭からつま先まで全て
自分の体だと感じる自由を静かに感じている。
会社を離れてから知り合った人すべてが
自分に優しくしてくれる巡り合わせに
今到達しているのを
気づいたのは
青春の時のヘルマンヘッセの
「ペーター・カーメンチント」を再読したからだ
本を読むことでしか得られない
どの快楽とも違う
自然に隠れた無限の広がりで感じる情緒
あの頃の焦りとともにぼくの心に芽生えた憧憬は
途方もなく長い歳月の労働のあとに
百の安堵と穏やかな笑いとともに
人生の収穫に実を結んだ
思いがけなく
ほんの小さな偶然で
こんなにも満たされてしまったぼくは
文学の掛け替えのなさを思った。