開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

郷愁には勝てなかった

ヘーゲル関連以外の本は読まないとした禁を破って、心の中の郷愁の源泉を辿るようにして再読してしまった。でも読後の感慨は幸せに満ちたものだった。こんな風ではぼくのヘーゲル研究なんて大したものにならないだろう。、、、しかし、行けるところまで行きたい、簡単にはやめない。

 

定年退職して7年経って69歳の今

ぼくは元気で、

ひょっとしたら今が人生で一番いい時かもしれないと思うほど、

こころが満たされている。

自分が自分にぴったり重なって、

頭からつま先まで全て

自分の体だと感じる自由を静かに感じている。

会社を離れてから知り合った人すべてが

自分に優しくしてくれる巡り合わせに

今到達しているのを

気づいたのは

青春の時のヘルマンヘッセの

「ペーター・カーメンチント」を再読したからだ

本を読むことでしか得られない

どの快楽とも違う

自然に隠れた無限の広がりで感じる情緒

あの頃の焦りとともにぼくの心に芽生えた憧憬は

途方もなく長い歳月の労働のあとに

百の安堵と穏やかな笑いとともに

人生の収穫に実を結んだ

思いがけなく

ほんの小さな偶然で

こんなにも満たされてしまったぼくは

文学の掛け替えのなさを思った。