開界録2019

ぼくの生きている実人生に架けられている「謎」を知ることから、一人で闘う階級闘争へ。

黒井千次「冷たい仕事」の朗読を聴く

たまたま黒井千次の「冷たい仕事」という短編の朗読がyoutubeに上がっていた。どこかの温泉旅館に同僚と業者の接待を受けて泊まった時のことがその小説に書かれていた。部屋に備え付けられた小さな冷蔵庫に霜が出来ているのを発見して、その同僚と「舞い上がる」のだが、そのこだわりが異常でミステリっぽくなるのが小説として黒井千次の特徴になるらしかった。日常のちょっとした小さな裂け目に注目して、異常に拡張することでドラマにしようとするのが良いみたいだった。小説の方法としてどこかの講演で語っていた気もする。確かに日常の中に非日常の裂け目はいろいろあるだろうが、それを目くじら立てて騒ぎ立てるのはどうかと思う。朗読を聴いたので尚更感じたのかもしれないが、小説に書いている時は文章を意図的に構想しているわけだから、作者本人もいきり立ってるように思える。それは安部公房の哲学的な裂け目とは似て非なるものだ。、、、がっかりだった。昨日、「春の道標」であれっと感じての今日だから、黒井千次のぼくの評価は地に落ちた。サラリーマン世界を小説にする希少な文学者として大いに期待していたので、落胆も大きい。