今日70になった。感想はと問われると、毎日充実して日々を送りたい気持ちを新たにしたと応えたい。今朝妻が誕生日おめでとうと、lavatoryで顔を合わせると一番に言ってくれた。その時の丸い笑顔が新鮮で感動的だった。ぼくに真正面から笑顔を向けられたのは、素晴らしい贈りものになった。いつもはそこまで顔が近くになることがないので、近さが新鮮だったのだろう。ところで昨日は、野々市の読書会で金沢にある、徳田秋声記念館に行った。若手の研究者が1時間かけて中の展示の解説をやってくれた。事前に団体見学として10名で申し込んでいたもので、レクチャー自体は無料で入館料だけでやって貰えた。とても熱が入ってほとんどぶっ通しで秋声を語ってくれて、メンバーの感想は上々だった。徳田秋声は今文学界で誰も話題にするものはいないと思いきや、古井由吉や中上健次が評価しているということだった。男女の間の取り留めのない日常の描写や生き生きとした文体が、それぞれ評価されている。弟子筋の川端康成に至っては、晩年の「縮図」は日本の近代文学の達成であるとも言っているそうだ。徳田秋声は日本人の文学のふるさとを作ったかも知れないと、ぼくは漠然とそんな感慨をもった。
時代とともに日常を淡々と生きる力を徳田秋声からつかみたいと、70になったぼくは意欲をもって自分に期したいと思う。