わが地域に40年ほど前から読書会があります。新しい知識の吸収に燃え小さなムラ社会からの脱出に意気込んで、働く婦人たちを中心に多くの読書会が作られたのでした。その人たちは今はご高齢になられて時代とともに、既にかつてのような力を失っている現状です。そこで原点に返って新たな出発を描けないか、問われるようになりました。知識の吸収は十分為されてきたので、知識ではない何かが次に掲げられるべきでしょう。知識を得た人間はある程度自立した個人であると思われます。ある意味、自立は孤独を含み自由であるとともに、個々ばらばらな面を持っています。読書を通じ会を持つことを繰り返してきた私たちは、一人一人は少しづつ違っていることを学んできたのではないでしょうか?同じ本を読んでも感じたことは微妙に違っていて、それを知ることが楽しかった経験を持っています。
そこで、まずは読書そのものに、本を読む自分自身に関心を向けてみましょう。ここで一度それぞれの自分の読書を振り返って考えてみたらどうでしょうか。読書は自分の生活の中でどんな時間で、長年読書を続けてきたことは自分にどんな影響を与えてきたのか、語り合ってみたらどうでしょう。
そんな読書会を開くためのテキストを選びました。小林秀雄の「読書について」です。読書の最高の達人の一人が語るそれは、きっと知恵の宝庫でしょう。